学習会:福祉の「いま」と「これから」

10月27日は、炊き出しのあと、恒例の学習会が行われました。

 今回は、福祉の第一線で働く方をお招きして、<福祉の「いま」と「これから」>について話していただきました。
 話は路上生活者の問題だけでなく、福祉行政の現状・障害者や高齢者の問題など多岐にわたり、私たちが何をふまえ、何をしたらいいかについてたくさんの示唆を頂きました。
 メンバーの1人1人が福祉の知識を身につけて、様々な武器を持つことの大切さを痛感した学習会でした。
 以下にその骨子をまとめました。これだけ長くても、もれていることがたくさんあります。学習会の内容は録音してありますので、興味のある方はご連絡ください。

<福祉の「いま」と「これから」>
●福祉って何?
福祉ってだれのためのもの?
弱い人や不運な人だけが対象ではなく、今、生きづらさを感じている人は誰でも福祉の対象になる。
そして福祉は、弱い人に対して上から与えられるものではなく、自分でとりに行くもの。

●生活保護のワーカーの仕事について
生活保護は、最後のセーフティーネット。困っている人が、ほかの方法(健康保険・年金・その他の福祉制度)で救えないときに、最後に生活保護で全員が救われるという建前。

 だから生活保護のワーカーは、福祉行政全てに精通していて、相談に来た人に、年金は出せないか、労災はもらえないか、ほかに救える方法はないか全てを調べ、それでもたりない部分を生活保護で補うということをしなくてはいけない。
 では現実に全ての制度を知っているかというと、正直厳しい。福祉制度はどんどん変わっていて、ワーカーも相当覚悟して勉強していかないとついて行けない。今度施行された障害者自立支援法関係の改正だけでもすごい量。読めないし、読んでも頭に入らない。
 だから、相談に行っても、区によって違うことを言われたりする。(まあ、どこでも一緒ではつまらないから、多少は区によって違いがあっていいが・・)

 生活保護のワーカーが全て知っていると思ってはいけない。お任せすれば全てやってくれるなんて幻想。自分が権利としてもらえるものは、自分で調べて、自分で取りに行った方が速い。遠慮しないで窓口に行って、「私はこういう状態だから、使えるものはないか」と言って、取りに行った方がよい。保護が駄目でも、ほかに何かないですか、という使い方で上手に使って欲しい。

 いいワーカーに当たるかどうかは運次第。
 いま、ワーカーは1人100人以上のケースをかかえていて、パンク状態。これ以上増やしたくないと思うのも無理はない。
 
 ワーカーは、昔はもっと教育してもらえたが、今はされていない。望まずに異動でワーカーになる人もいる。仕事が嫌で仕方が無い人は、本人もその人に担当される人も不幸だ。
 でも、ワーカーの仕事ができるというのはすごく幸せなチャンス(そう思ってない人もいるけど)。自分より人生経験の多い人と出会えて、すごく勉強になる。また、この人が使える制度がないかと必死になって探すと、これも勉強になる。こういうのはほかの部署では絶対にない。
 (一度、志のある仲間だけで福祉課を固めてみたい、と話したりもしている。そうすれば何か変わるかもしれない。逆に全員つぶれてしまうかも知れない)

 今、福祉行政の窓口をやろうとしている人たちは、多かれ少なかれ、問題意識を持っている人が多いと思う。だから、こちら側も知識とコミュニケーション能力を身につけて、うまく制度にきりこんで、使って欲しい。

●コミュニケーション能力・想像力
福祉を貧しくしているものとして一番に感じられるのは、コミュニケーション力の低下だ。相談に来る人がHELPをうまく出せないことだけでなく、相談員のほうもコミュニケーション障害と思われることがある。福祉の現場をよくしてゆくのは、その場に応じていかにコミュニケーションをとってゆくのか、ということ。
一番肝心なのは、想像力。想像力のない人間はワーカーになってほしくない。
自分と違うものに対して、いかに受容的になれるか、ということ。

●生活保護について
 生活保護受給世帯が100万世帯を超えた、といって生活保護を抑制しようとする動きが盛んだが、高齢化、単身世帯の増加を考えると、実人員は急激に増えているわけではない。
 年金制度が破綻し、国民年金支給額が生活保護支給額(健康で文化的な最低限度の生活のために必要な金額)を下回っている。25年まじめに払ってきた人の年金が生活保護よりも低かったら国民が納得しないでしょ、といって、厚生労働省は生活保護支給額を下げようとしている。年金破綻の責任は取らないで・・・本当におかしい事。でも、いいことではないが、年金をもらっている人と、生活保護を必要としている人が分断されていて、一緒に怒れないようにされている。国の巧妙なやりかた。

●「ホームレス」と福祉
 路上の人たちも、どんどん若い世代が増えている。若いからといって仕事が見つかるとは限らず、失業から路上に行くまでの年数が早くなっている。家族がいても家族の援助が期待できないことが多い。
 すでに悲鳴を上げている生活保護制度は、これから、相当いじられるという気がする。

 日本の労働人口は減っているのに仕事はないというのが現状。
 日本はどんどん仕事を海外に出してしまった。
 その辺の状況は障害者でも同じ。いままで障害のある人がもらっていた仕事が海外に行ってしまって、作業所が立ちゆかなくなっている。もちろん、障害者年金が主たる収入だが、それに作業工賃が大事な副収入になっていた。それがもらえなくなっている。

 年金が減り、高齢者の介護や医療の負担が増え、障害者の負担が増えた。そして、最後に生活保護を削ろうとしている。そこまではやらないだろうと思われていた部分に手を付けようとしている。高齢者加算がなくなり、母子加算がなくなり、障害者加算に手を付けるかどうかが今の焦点。

 路上の人たちの問題が厳しいのは、都市の問題という側面があるから。行政担当者も、地方の人たちは路上生活の問題を全く知らない。生活保護の高齢者加算がなくなったことは、全国の問題で、田舎のおじいちゃんおばあちゃんの生活にも直結するから大問題になる。でも路上生活者の問題は、全国的な問題になりにくい。

障害者自立支援法や、療養病棟の削減で、これから障害や病気のある人が路上に出ることが増えるだろう。 
 認知症の高齢者が受けられる医療も貧富の差が大きい。路上生活者に脳梗塞の後遺症を持つ方が少なく無いが、こ
れからも増えるし、今も彼らを受け入れる社会的資源は、無い。

●てのはしに期待すること
 「ホームレス」の問題をもっと声をあげていってもいいと思う。
 住民票がなくなると、社会保障をはじめ、様々なサービスがうけられないということ、就職が出来ないことなどを知っている人は、すごく少ないと思う。
 ホームレスは、よくも悪くも少しずつ注目されるようになってきたが、皆には見えていない問題。これをvisibleにしていく作業が大事なのでは。
 福祉を与えられるものとしてとらえるものでなく、自分たちで豊島区を変えていくくらいの意識を持って取り組んでほしい。

(次回の勉強会は11月25日19時より、講師 湯浅誠さん テーマは「生活保護」です。 )

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