回復する場所、自殺対策

最近、とある場所で、他団体の医療相談会に参加してきました。

そこでは、支援団体と、区と、保健所とが一緒になって、レントゲン車を出して、
数名の医師によって、22名の方に医療の紹介状を書くことができたという大きな成果がありました。

ただ、豊島区とは違って、医療だけうけて野宿のままの方も多いようなので、

医療を通して野宿から脱したいという願いを支えられないのがとても歯がゆいです。

その日僕が診察した方のうち

半分はアルコール依存症の疑いがありました。

積極的に聞かないとわからないなとあらためて思いました。

そんな中でも、
アルコールを5年半やめ続けている方がいらして、

「いまだに幻聴が聞こえるんです」

とおっしゃっていたのが印象的でした。

ただ、その内容は子供に

「おとうさん、また飲んでるの?」という種類の声が多いようで、

ずっと苦しんでいるようでした。

医療にかかって、社会復帰して、もういちどやりなおしたいと。

その支援になるよう、医療の紹介状を書きました

そううつ病の診断を受けたことがない、そううつ病と診断させてもらった方がいらっしゃいました。

うつ状態になって、精神科クリニックにいって、抗うつ薬を飲んで、攻撃性がまして、子供に怒鳴っていた自分に気付いて、薬をやめたそうでした(うつ病とした誤診でした)。

その後医療にかからなかったために、感情コントロールが難しく、離婚され、その苦しさから働けなくなって、野宿に。

「子供にあいたい」とおっしゃっていたので、

薬を飲んで治療をうけて、そして、家族に病気のせいだった、もう大丈夫、ごめんねと、子供に伝えられるようにと、医療の紹介状を書きました。

失業、不眠、うつ病となって、気力がわかない方もいらっしゃいました。

ホームレス状態から脱するためには、杓子定規に集団生活に放り込まれます。

こんな精神状態の方が、集団生活への強い気力が生まれるわけがなく。

うつ病です、集団生活は無理ですと紹介状を書きました。

知的障がいと思われる方が2名いらっしゃいました。

こうした苦しんでいる方々が、

社会復帰するにあたって、

現在の福祉窓口の対応方法では、

とても支援できません

そして、こうした方々にとって重要なことは、

「相談できる場所がある」

ということを知ることです。

多くの方が福祉窓口に行った経験があるにもかかわらず、

相談にちゃんとのってくれなかったと言います

(のってくれないという状況の方がホームレス状態が続くのだと思います)。

最後の相談場所と思われた場所で、支援をうけられなかたときに、

もう、おれは、わたしは、どうすることもできないと思うわけです。

そんな方々へ向けて、「相談できる場所ですよ」と、出向くことが重要です。

失業して、福祉へ相談に行ったら「もっと頑張りなさい」と言われて、
頑張ったけどもアパートから追い出されたような方が、いま、たくさんいます。
どこに相談に行ったらいいかもわからず、

それはどうなるかというと、

自殺を選択します。

警察庁の統計では、「浮浪者」の自殺の年間人数が出ていますが、
上記のような形で自殺した方は、「浮浪者」には含まれませんので、もっともと多いはずです。
(それでも200名に1名の割合で自殺しています)

どこに相談したらいいかわからなくなった方にとって、
炊き出しは、最後の砦です。

はじめてホームレス状態になった方々は、周りのホームレス状態の方々に「炊き出しがある」と教えてもらうのです。

こうして炊き出しに来た方が、相談していいんだと思える。
そういう場所なのです。

「相談していいんだ」と思ってもらえるように、する必要があります。

そんな気持ちをつくるための仕掛けが、炊き出しにはたくさんあります。

炊き出しという場は、傷つきすぎた方が、

もう一度元気になろうと思えるための仕掛けが、たくさんあります。

8月26日、国の自殺対策を行う機関で、「ホームレスと自殺」について、講師として呼んでいただきました。

一人でも多くの方が助かりますよう。
苦しみから助かればと願います。

この記事を書いた人

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