“脱・ホームレス”ガイド

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いま様々な事情で家がない暮らしをしている皆さんのための実践“脱・ホームレス”ガイド

「若いから・元気だから・家族に連絡されるから、
役所の支援は受けられない、生活保護なんて無理」と
誤解している人のために、ガイドを作成しました。もちろん受けずに済めば一番ですが。

 “脱・ホームレス”ガイド

ここは、路上やネットカフェで寝起きしていたり、友人宅で居候をしている人のためのページです。

つい最近までネットでナマポ(生活保護)叩きやら外国人の悪口で盛り上がっていたと思ったら、あっという間に仕事がなくなり、新しい仕事は見つからず、家賃が払えなくなってネットカフェ暮らし……という人は、あなただけではありません。この不景気に自力で家を取り戻すのは至難の業です。近くの福祉事務所に相談に行き、支援を受けましょう。
また、「アパートはまだあるけど、家賃を払えないくらい困っている」という人も、やはり1日も早く相談することをおすすめします。アパートを失ってから相談に行くよりはるかに立て直しが楽です。1人で相談に行くのは自信がないのであればまず法テラスに相談するとよいでしょう。

脱・ホームレスに利用できる制度は、
大きく分けて「生活保護」と「自立支援」

「住まいから出なければいけなくなった」「仕事が見つからない」などの事情が重なって、自力で生活を続けていくことがどうしてもできなくなったときに、最低限の生活を保障する公的な制度があります。国民誰しもが利用できる制度です。
1つは「生活保護」制度、もう1つ(都内の場合)は「自立支援」制度です。
この2つは管轄が違っていたり、利用できる条件が異なっているので、まずは両者の違いを知り、自分はどちらを利用したいのかを判断しましょう。

 生活保護 
どこがやっているか
利用できるのはどんな人か生活に困っていて、収入や財産が基準より少ない人。現役の暴力団員はだめ。
手持ちの金がいくらあったら断られる?法的には基準額以下であれば申請できる。
どこに申請するか区市町村の福祉事務所
申請できる時間平日の朝9時から夕方5時までですが、朝早く行くのがよいでしょう。
家族に連絡がいくかいきます。ただし、家族に虐待されていたなどの事情があればいきません。
どこで寝泊まりするか都内では、最初は民間の宿泊施設やネカフェやドヤ。しばらくしたらアパートに移れる。
どういう生活をするか役所の担当の人と相談。若くて健康であれば就職活動をする。
何回利用できるか何回でもOK。ただし、同じ月に2度保護費は出ない。
いつまで利用できるか特に決まっていない。収入が基準額を超えて安定するまで。
どうすると切られるか役所の指示書に従わなかったとき。失踪して一定期間が過ぎたとき。
 自立支援事業 ※男性のみ 
どこがやっているか路上生活者が多い都道府県。少ないとやっていないところもある。
利用できるのはどんな人か住まいがなく、就労を希望する男性。女性は他の事業を利用。入院や介助などの必要のある人は生活保護へ。
手持ちの金がいくらあったら断られる?だいたい20万円以上(それ以上あれば、アパートを契約しましょうということなのでしょう)。
どこに申請するか区市町村の福祉事務所
申請できる時間平日の朝9時から夕方5時まで。ただし抽選日しか受け付けないところもあるので注意。
家族に連絡がいくかいきません。
どこで寝泊まりするか緊急一時保護センターという寮に入る。
どういう生活をするか係と相談して、就職できる人は就職活動。難しい人は生活保護になることも。
何回利用できるか3回までというのが慣用らしい。また、前回利用してから6か月たたないと申請できない。
いつまで利用できるか1か月~4か月。就職してアパートに入るお金が貯まるまで。
どうすると切られるか指示に従わなかったとき。門限を破ったり飲酒したとき。

 生活保護とは

生活保護とは、自力では生活できなくなった人に最低限の衣食住は国が保障します、という制度です。国が行う制度ですから仕組みは国内であればどこも同じです。

まず皆さんが知りたいのは、「いったいどのくらい困ったら受けられるのか?」ということでしょう。
だいたい預貯金を含めて使えるお金が基準額以下になったら申請できるはずです。要するに、家賃を払ったらご飯が食べられないという結論が出たら福祉事務所に行きましょう。
年金をもらっている人でも医療費や引っ越しなどやむを得ない出費で生活が立ちいかなくなったら受けることができます。
たとえば、年金を月額10万円もらっていたとしても、入院して医療費の支払いに当てているために手持ちがなくなってしまったという場合は、生活保護の申請ができます。
次に「いくらもらえるのか?」という質問にお答えします。生活保護は毎月現金で給付され、その額は年齢と地域によって差がありますが、東京都では単身なら家賃(住宅扶助といいます)+生活費(生活扶助といいます)で月額約13万円が基準額です。したがって、それ以上の収入(年金、仕送りなども含む)がある人は受給できません。
実際に支給される額は、生活保護の基準額から収入や所持金を差し引いたものです。毎月の収入(おおむね月に1万円以上)がある人は、役所に申告をしなければなりません。派遣などで毎月の収入が変わる人は、あらかじめ役所とよく話し合いましょう。
「生活保護を受けやすい自治体とそうでないところがあるのではなのか」という質問もよく受けます。国でやっている事業ですから受けやすい自治体というのはないはずですが、受けたあとに差が出てきます。
東京などの大都市には、生活に困った人が仕事を求めて全国から押し寄せますが、都会も不景気で、仕事がなくて家を失う人がたくさんいます。そこで、それらの人がやむなく大都市の福祉事務所に行って生活保護を申請します。福祉事務所は、住むところの定まった状態で保護する義務があるのですが、部屋を用意して待っていることもできないので、いわゆる「貧困ビジネス」と言われるような民間の宿泊施設に泊まるように指示する場合が多いのです。多くは相部屋で、飲酒は禁止・門限などもある不自由な施設ですが、生活保護費のほとんどを利用料として天引きされて手元に残るのは月1~2万円になってしまいます。
ホテルや旅館に泊めてもらいたくても池袋周辺には住宅扶助(最高で月額53,000円/2014年)で泊まれるところはほとんどありません(ただし、生活費を宿泊費に回して限度額以上のところに泊まることを認めてくれる場合もあります)。
「どうしても個室でないと耐えられない」と相談するとドヤ(山谷地区の簡易旅館・あとで説明)の空きを探して泊まることを認めてくれる場合もあります。

民間の宿泊施設やドヤなどで1か月~半年くらい辛抱したら、やっと敷金礼金などを出してもらえてアパートに移れます。ただし大都市は家賃が高いので、借りられる部屋も古くて狭いのが普通です。

例外的に、あなたの知り合いにアパートの大家さんがいて、あなたにアパートを貸してあげる、と約束して契約書を作ってくれると、いきなり生活保護でアパートに住むことができます。
書類上、住所のある地域住民ですから、アパートで保護を受けることは可能です。
また、アパートの空き部屋が多い地方都市では、最初からアパートが普通のようです。

★救急車での搬送から生活保護へ
家もお金もない人が倒れて救急搬送され、生活保護になることもあります。本人にお金がないのですから病院は費用を福祉事務所に請求し、その時点で保護がスタートするわけです。この場合、どこで救急車が呼ばれたかで担当する福祉事務所が決まります。池袋で倒れたら運ばれた病院がどこでも担当は豊島区役所という具合です。
退院したからといって生活保護は廃止にはなりませんので、病院から出たら担当のケースワーカーに会いに行って今後の生活を相談しましょう。

★昔、暴力団に所属していたが…
今は脱会しているという人は、それを証明しないと生活保護が受けられません。証明の方法は福祉事務所から警察に問い合わせて返答を待つしかありません。時間がかかりますがその間の居場所は自力で確保する必要があります。

★女性の場合
DVなどで家を出た女性が福祉事務所に保護を求めると女性専用の施設を紹介されます。残念ながらこちらも個室ではないことが多いです。婚姻届を出したカップルで家がないという場合は家族寮を使います。

 生活保護の申請方法

  1. まずは窓口へ
    ここではTENOHASIが活動している東京都豊島区を例に挙げて紹介します。役所の係の名称などは自治体によって異なる場合がありますが、生活保護のシステムはどこでもほぼ同じです。
    まず申請する窓口は豊島区役所にある生活福祉課ということころです。平日の朝8時半に開きますが、なるべく早く行ったほうがあまり待たされないでしょう。
    生活福祉課のカウンターに行くと、紙が置いてあります。自分が困っていることに該当する項目にはっきりと丸印を付けて、カウンターのところにいる呼び出し係の人に、「生活保護お願いします」と言って提出しましょう。申し訳なさそうにすることも、強がる必要もありません。
    しばらくしたら、名前を呼ばれ相談室というところに入ります。ここであなたが出会うのは福祉課の相談員です。相談員の名前をメモしておきましょう。そして、自分の現状をありのままに話してください。
    大事なのは、「生活保護を申請したいのでお願いします。」とはっきり言うことです。ちなみにこのとき、印鑑・通帳(事前に通帳記入を済ませておくとよいでしょう)・免許証・過去の住基カード、診察券、障害者手帳などがあれば持参しましょう。また借金の状態もハッキリさせておいたほうがよいでしょう。
  2. 問題の解決法
    あなたが以下の3つの問題に当てはまる場合、どうすればよいか解決法をお教えします。
    ①あなたに借金がある場合
    ②家族に連絡されたくない場合
    ③身体的・精神的理由により個室でないと眠れない場合①…借金を最後に払ってから10年以上経っていれば時効ですので気にする必要はありません。それより短い期間であれば債務整理や自己破産をおすすめします。生活保護希望者は法テラス(HP)(電話番号0570-07-8374または03-6745-5600 平日9:00~21:00、土曜9:00~17:00)で弁護士が無料で相談にのってくれます。知っておいてほしいのは、個人の借金を保護費で返してはいけないということです。それから、自分の保護費を人に貸してもいけません。注意してください。②…生活保護は最後の手段なので、「扶養照会」といって家族や親戚に「援助してもらえないか」と聞くことが福祉事務所に義務付けられています。電話やはがきによる問い合わせが多いようです。ただし、「家族から虐待を受けていた」「居場所を知られたくない」などの特別な事情がある場合は、家族に連絡をとらずに生活保護を認めてくれる場合もあります。相談員によく事情を説明しましょう。③…あなたが臭いや音に敏感で個室でないと眠れないという場合は、自分でそれを証明しなければなりません。それには医師の意見書が必要です。支援団体の医療相談をご利用ください。
  3. 申請から保護開始まで
    相談員が申請書、収入無収入申告書、資産申告書という3枚の用紙を出してきたら、申請の手続きに入ります。申請書を提出したうえで審査を受けて、生活保護は開始されます。そして理由なく打ち切られることはありません。正式な決定までには2週間ほどかかり、その間の生活費は社会福祉協議会(社協)というところから前借りする形になります。実は、申請書の書式は決まっていません。自立サポートセンターもやい(HP)のホームページでは申請書などがダウンロードできます。申請書を提出したら担当のケースワーカーという人がつきます。住所不定の状態で申請すると、豊島区の場合は1係という部署になります。ここで、あなたが病院に行かなければならない場合は、意見書(保護決定後は医療券)というものを発行してくれます。それを持って近所の病院に行きます。そうではない場合は、ケースワーカーはすぐにあなたの泊まる場所を探し始めます。日本の憲法で定められた、「最低限度の文化的生活」にはプライバシーは含まれていないようで、個室は期待できないことが多いです。個室を希望する方は、東京の場合は山谷のドヤ(¥1,800~2,200/日程度の簡易旅館 ★参照)に入ることができる場合もありますが、豊島区の場合は施設が空いていればそこが優先されるでしょう。また、重い障がいなど特殊な事情があれば住宅扶助の限度額(53,700/月 2012年豊島区の場合)を超える旅館に泊まれる場合もあります。★ドヤについて
    ドヤというのは簡易宿泊所、つまり民間が経営している安い旅館です。
    東京でいうと台東区、荒川区の、そういう地名はないのですが、山谷地域と呼ばれる場所に集中しています。ここは高度成長期には全国から日雇い労働者が集まってきて働く→泊まるということを繰り返していた場所です。ドヤに泊まっているが仕事が切れるときがあって、そういうときにドヤで生活保護を受けるというローカルな慣習がこの地域で発達しました。現在では高齢化によって福祉の街になっています。23区の福祉事務所でこの地域のドヤを個室ではないとダメな病気の人などのために利用しているところはありますが、福祉事務所や個々のケースワーカーの判断によるところが多いようです。
    自分でドヤの部屋を押さえて1~2泊分のお金を払って、その状態で申請するという手段は成立します。その場合、宿泊証明という書類を福祉事務所でもらってドヤで書いてもらいます。
  4. もし申請すること自体を拒否されたら
    水際作戦といって、区役所の窓口で生活保護の申請書を書かせてもらえず、相談だけで追い返された場合や、若い・多少の収入がある・年金受給しているなどの理由で生活保護申請を断られ、納得いかない場合はどうすればよいでしょうか?都内の場合、まず東京都生活福祉部保護課(電話03-5320-4064)に電話して、
    「○×区の△▲という職員に●□ということを言われたがそれは違うのではないか」と言って回答を求めてみましょう。その回答を待って先程の職員のところへ行き、「東京都はこう言っているが本当はどうなのだ」と問い直します。その職員が本当に間違った対応をしている場合は、これで解決する場合もあります。それでも埒(らち)があかないときはホームレス総合相談(HP)(電話0120-84-3530 月水金11時~17時)に電話してみましょう。法律の専門家が相談にのってくれます。また、支援団体の生活相談もご利用ください。
  5. 最後に
    生活保護費で借金を返してはいけないこと、人に貸してもいけないことはおわかりいただけたと思いますが、パチンコやお酒はどうでしょうか?それらを禁じる法律はもちろんありません。しかし、あなたがパチンコで何度も生活保護費を使い込んでしまったら、指示書というものが出されます。そしておそらく、酒やギャンブルの問題を解決する施設に入ったり精神科やカウンセリングに通うことが義務付けられるでしょう。それでも自分は病気ではないと主張して指示違反を続けると、いよいよ保護が打ち切られてしまいます。さらに、指定された施設からいなくなるなどの場合も保護停止の対象になり、消息不明になれば生活保護は廃止となります。これらのことは、どんな事情があったにせよ、一種の詐欺行為とみなされ、記録が残ってしまいます。だからといって再び保護を受けられなくなるということはありませんが、アパート暮らしが遠くなることは確かです。

 路上生活者自立支援事業とは

自立支援事業は、地方自治体が行う事業なので地域によって仕組みが違います。路上生活者が多い大都市では充実していますが、地方ではあまり行われていません。ここでは東京23区での仕組みを説明します。

利用できるのはその地域で路上生活をしている男性です。所持金の上限の規定はありませんが、常識の範囲内ということで、20万円程度の貯金があったら、利用を断られる場合が多いようです。おそらく、その位あったらアパート契約できるとみなされるからではないでしょうか?
申し込み窓口は生活保護と同じく、区の福祉事務所です。路上生活者が多い区では、利用申し込みは週1回、希望者が多いと抽選というところがあるので気をつけましょう。

自立支援センターに入ると、食事・寝床・風呂は保障され、外出もできます。ここで路上生活に疲れた身体をしっかり休ませてこれからのことを相談します。
自立支援センターは都内に5か所あり建物のタイプもいろいろです。23区が持ち回りでやっているようです。豊島区・練馬区・板橋区などから申し込むと板橋寮という施設になります。6ヶ月の利用期間が終わるまでに、就職して貯金し、アパートを借りることを目指します。ちなみに1度利用すると再度利用するまで半年間は待たないといけないことと、一生のうち3回までしか利用できないという制限があるので気をつけましょう。

そこに住所を置いて就職活動をします。仕事が見つかれば、家賃も食費もかからないので、お金がたまります。たまったお金でアパートを借りて自立支援センターから出るのが理想ですが、成功率は半々というところでしょう。事実、自立支援に行ったが仕事が見つからず、改めて生活保護に切り替えるのはよくあることです。

生活保護の申請に行ったが、別の制度をすすめられて受けられなかったということを聞いたことがあるかもしれません。そのほとんどはこの自立支援だと思います。

 その他、更生施設など

更生施設は、身体的精神的に課題のある人を受け入れて保護と生活指導を行う施設です。生活保護を受けて入所します。6か月~10か月くらいのプログラムで、入所した人の自立に向けたサポートを行います。
宿泊と食事がつきますから、手元に残る保護費は1日500円くらいです。担当の生活指導員がつき、服薬管理などの生活指導をはじめ、病院への同行や、就職活動のサポート、アパート探しのお手伝いをしてくれる場合もあります。1人部屋は少ないです。東京都内では10か所で、定員は891名です。

 厚生労働省HP

全国福祉事務所一覧表

 各地の生活保護相談窓口

【東北地方の方】
東北生活保護利用支援ネットワーク
022-721-7011(電話受付:平日13時~16時)
【関東甲信越地方の方】
首都圏生活保護支援法律家ネットワーク
048-866-5040(電話受付:平日10時~17時)
【愛知県・岐阜県・三重県の方】
東海生活保護利用支援ネットワーク
052-911-9290(電話受付:火・木13時~16時)
【大阪府・京都府・兵庫県・滋賀県・奈良県・和歌山県の方】
近畿生活保護支援法律家ネットワーク
078-371-5118(電話受付:月曜・火曜日13時~16時)
【福井県の方】
北陸生活保護支援ネットワーク福井
0776-25-5339(電話受付:火曜18時~20時)
【石川県の方】
北陸生活保護支援ネットワーク石川
076-204-9366(電話受付:火曜日13時~15時、18時~20時)
【中国地方の方】
生活保護支援中国ネットワーク
0120-968-905(電話受付:平日9時30分~12時、13時~17時30分)
【四国地方の方】
四国生活保護支援法律家ネットワーク
050-3473-7973(電話受付:平日10時~17時、13時~17時)
【九州・沖縄地方の方】
生活保護支援九州・沖縄ネットワーク
097-534-7260(電話受付:平日13時~17時)
【上記以外の地方(北海道・富山県)の方】
首都圏生活保護支援法律家ネットワーク
048-866-5040(電話受付:平日10時~17時)